おふろタイムズ

おふろタイムズとは

『おふろタイムズ』は、日々のおふろ時間を豊かにするウェブマガジンです。入浴の質を高め、芯まであたたまるための情報から、日本各地にある温泉や銭湯をめぐるストーリー、松田医薬品の入浴剤へのこだわりまで、さまざまな記事をお届けします。

身体があたたまるとポジティブなコミュニケーションが生まれるーー。 従業員の健康を促進し、コミュニケーションを円滑にするためにオフィスにサウナを作った会社があります。 自動車や航空を中心に技術サービスを提供する、総合エンジニアリング企業「タマディック」です。

タマディックのサウナ「LUOVA SAUNA(ルオバサウナ)」があるのは、2021年に名古屋に竣工したビルの最上階。 高級スパのような落ち着きのあるデザインが施された空間には、サウナルーム・水風呂・リラックススペースが広がります。

「LUOVA」とはフィンランド語でクリエイティブを意味する言葉。エンジニアのアイデアを生み出す場としても活用されています。

ビジネスとサウナ。一見すると関連のない両者をつなげたのは、タマディックの代表を務める森實敏彦さん。 1日に2回のサウナを欠かさない愛好家であり、昨今のサウナブームの火付役となったマンガ『サ道』に、「LUOVA SAUNA」とともに登場したこともあります。

森實さんがオフィスにサウナを作った理由は、フィンランドで学んだ「サウナが持つポジティブな力」なのだそう。

そのポジティブな力とは? どのようにビジネスに活きているのでしょうか? 疑問を解き明かすため、森實さんに話をうかがいました。


(プロフィール)
森實敏彦(もりざね としひこ)


1973年愛知県生まれ。株式会社タマディック代表取締役社長。大学を卒業後、外資系IT企業を経てタマディックへ入社。2002年より代表取締役を務める。 フィンランド大使館公認のフィンランドサウナアンバサダーであり、マスターオブフィンランドサウナにも認定されている。

フィンランドで学んだ「語らいができるサウナ」を日本のオフィスに

オフィスサウナ設置のため、フィンランドのサウナを視察した森實さん
オフィスサウナ設置のため、フィンランドのサウナを視察した森實さん

「LUOVA SAUNA」はフィンランドのサウナを参考にしているそうですね。どのようなサウナなのでしょうか。

僕はオフィスサウナを作る前にフィンランドに飛んで現地のサウナをまわったのですが、フィンランドの人たちは会話をしながら15分くらいサウナに入っていたんですよね。 サウナの温度は70℃くらいで息苦しくもない。みんなリラックスしていて、コミュニケーションがよく生まれるサウナでした。

もしオフィスにサウナを作るなら同じような場にしたいと思い、「語らいができる場所」をコンセプトに、ビルの設計を依頼していた建築家の坂 茂(ばん・しげる) さんと相談しながらサウナを作りました。

「LUOVA SAUNA」の温度は80℃から85℃と、一般的な日本のサウナ施設の温度よりも低めに設定しています。水風呂も15℃です。やさしいセッティングにしているの で身体への負担も少ないですよ。毎日入ることができます。

ゆったりと楽しめそうですね。ちなみに、サウナで快適に身体をあたためるにはどのようなことが重要なんでしょうか。

気持ちよく身体をあたためるには大事なことが2つあります。まず、サウナストーンに水をかけて蒸気を起こし、その蒸気を浴びること。日本ではドラ イサウナも多いですが、フィンランドのオーソドックスは蒸気サウナなんですよね。こまめに蒸気を浴びることで発汗を促せます。

もう一つが空気の循環。フィンランドのサウナではドアの下部に10cmくらい隙間があって、そこから常に新鮮な空気が入ってきます。それと同時にサウナ内 に滞留している空気も外へ出ていく。しっかりと空気が循環しているので息苦しくありません。

「LUOVA SAUNA」でもこの2つを重視しています。しっかり蒸気を浴びられるようにサウナルームの天井の高さなどを細かく調整し、換気性も高めました。 その甲斐もあってか、サウナに入る社員たちは15分くらい身体をあたためながら会話を広げています。

サウナ室もゆったりと広いですよね。

10人くらいは快適に過ごせるサウナです。社員なら誰でも入れますし、取引先の方とサウナのなかでお話することもありますし、社員と一緒であれば家族や友人も利用することができます。

「LUOVA SAUNA」が完成してから入社した若い社員には、研修期間にサウナの使い方や入り方を教えています。

新入社員研修でサウナの入り方まで教えてくれるんですね……!

新入社員だからといって遠慮して入らないのはもったいないので、研修期間中に使い方と入り方を教えています。 その効果もあってか、会社にサウナがあるのは当たり前、という感じで、仕事のなかで上手く活用している社員も多いです。

社屋の最上階にある「LUOVA SAUNA」。休憩スペースは見晴らしがよく、リラックスするのにぴったり
社屋の最上階にある「LUOVA SAUNA」。休憩スペースは見晴らしがよく、リラックスするのにぴったり

ビジネスではどのような場面でサウナを活用しているのでしょうか。

大きな会議の後は積極的に活用するようにしています。というのも、会議って疲れるじゃないですか(笑)。 準備を進めるのも発表するのも発言するのも、緊張しますよね。

「お疲れさま」とお互いにねぎらいながら、会議の感想を話し合ったり、言えなかったことを伝えたり、質問をしたり。 会議後のコミュニケーションを取る場としてサウナを使っています。

もちろん身体をあっためながら雑談してもいい。それもサウナ室のよさだと思います。一緒に働いているといっても同じ人間同士。 服と一緒に役割も脱いで、同じ目線で話をする。こういう時間が職場での信頼関係を生むのだと思います。

サウナが社内コミュニケーションを深める場になっているんですね。

フィンランドに視察に行った時に、いろいろなビジネスシーンでのサウナの活用例を聞きました。 会議後、研修後、新規プロジェクトのスタート、チームビルディング……。それらの情報を参考にして、仕事のなかでサウナを使いやすい環境づくりもあわせて考えていますね。

以前、フィンランドの大使も「サウナの中でお互いのことを認め合えるようになれば、社会全体でもそれができるようになる」とおっしゃっていたんですが、 たしかにその通りだと思います。

サウナの場としてのポテンシャルの高さがわかりました。でも、オフィスにサウナがあるとメンテナンスが大変じゃないですか……?

実は、メンテナンスはそこまで大変じゃないんです。サウナの電源を切ってオフィスから出ると、翌日にはサウナルームは乾燥しています。汚れている部分をふいたり、掃いたりすれば清潔な状態を保てます。 うちは、清掃はビルメンテナンスの会社にお願いしていますね。

おふろも併設だとメンテナンスは大変だと思いますが、サウナと水風呂だけであれば管理面での苦労はそれほど大きくないと思いますよ。

「あったまる」とポジティブになり、気持ちのいいコミュニケーションができる

会社でのコミュニケーションを深める場には、喫煙所や飲み会がありますよね。これらと、サウナでのコミュニケーションは異なるんでしょうか。

サウナは身体も心もすこやかな状態でコミュニケーションを取れるんですよね。いまは喫煙している人も少なくなっていますし、あまり健康的ではありません。

飲み会の場もビジネスではよく活用されます。ただ、酒の席はどうしても盛り上がりすぎることがあって。勢いのあまり言い合いになる場面もあるし、いい雰囲気で盛り がったとしても覚えていない場合もあります(笑)。金銭的な負担もありますし、飲みすぎると健康にもよくありません。

会社でのコミュニケーションを深めるのなら、サウナくらいの気軽さがいいのかなと思います。

なぜサウナだとコミュニケーションがうまくいくのでしょう。

サウナでは不思議とポジティブなことしか言えなくなるんです。身体が芯からあったまると、ネガティブな話ってできないんですよね。

あとは、不思議と複雑な話もできなくなるんです。サウナから水風呂、水風呂からリラックススペースなど、頻繁に移動が発生するので、 同じ話題を話せる時間は限られています。隣に座っている人も変わり、話題も軽快に移り変わっていく。いい温度感で人と接することができるんです。

サウナで雰囲気が悪くなることはないんでしょうか。

サウナでの雰囲気をよくするために、「LUOVA SAUNA」では「悪口を話さない」という基本的なルールを作っていて、上下関係を持ち込まないことも暗黙の了解に なっています。

2021年11月に、駐日フィンランド大使から日本初のオフィスサウナとして認定された「LUOVA SAUNA」
2021年11月に、駐日フィンランド大使から日本初のオフィスサウナとして認定された「LUOVA SAUNA」

なるほど。ちなみに森實さんはどのようにサウナを活用しているのでしょう。

仕事を始める前と、仕事終わりに入っています。朝のサウナはいいですよ。体温が上がるので頭がよく回りますし、内臓機能も活発になるから消化機能も向上します。 ただ、長く入ると気持ちよくなりすぎちゃうので、朝はリラックスする前に上がるようにしていますね。

私はサウナの入り方を2つにわけています。先ほど申し上げたような短時間で入るサウナを「ファストサウナ」と呼んでいて、気持ちを切り替えて、 やる気をブーストするための入り方として使っています。平日は時間も限られているのでこの方法ですね。

もう一つが、リラックスするための「スローサウナ」。週末に家族や友人とリラックスしながら過ごす目的ですね。

ここまで健康という言葉も何度か出てきました。タマディックでも健康経営を掲げていますが、健康を重視している理由はなぜですか。

20年以上会社の代表を務めるなかで、約5年に1回、大きな社会情勢の変化が起こるという実感があったんです。その変化に対応するために、会社としては新規事業を起こしたり、撤退する選択をしたりと、緊張感の続く状態で頑張らないといけない。社会の流れに向き合い、 ある意味で自分のこれまでの方法を否定しながら、組織や事業を新たに組み換えていく必要があります。

こういった状況を乗り越えるためには、体力があって、心もすこやかでないといけません。私も若い頃はヘビースモーカーで、毎晩のようにお酒も飲みに行っていたんですが、身体が不健康な状態で心も追い詰められるととても耐えられないんです。 数年に一度の社会の大きな変化を乗り越え、会社の代表として多くの社員を守るためには、なによりも健康が不可欠だと実感したんです。

会社としての利益を出し、大変な時は社員同士でサポートしながら、安心して休暇の時間も取ることができる。 そんな健康的な会社にしたいという想いの象徴がオフィスサウナ「LUOVA SAUNA」なんです。

ありがとうございました。これからオフィスにサウナを作る企業も増えてきそうですね。

「LUOVA SAUNA」ができてからの3年で、たくさんの企業が視察に来てくれました。実際にサウナをつくられた企業も何社もあります。

オフィスにサウナがあって悪いことはありません。強制的に入らないといけないわけでもないですし、一緒にサウナに入った人とは仕事以外の場面でも話を交わしやすくなります。いろいろな会社に体験してほしいし、 オフィスサウナを作る会社が増えるといいですよね。大げさではなく、日本の幸福度と生産性が上がるのではないかと思っています。

ビジネスパーソンに「身体があったまることと仕事の関係性」を聞いてみた

森實さんのお話で、サウナが職場でいい作用を生むことがわかりました。

オフィスにサウナが併設されていない私たちも、普段の仕事のなかでおふろやサウナの効果を取り入れることはできるのでしょうか? そんな疑問をぶつけるのにぴったりの機会がありました。

先日、東京都台東区の湯どんぶり栄湯で開催された、 松田医薬品主催のイベント「銭湯でおとなのインターン~実践型マーケティングイベント~」 です。

参加者が松田医薬品の入浴剤のキャッチコピーを考え、フィードバックを通してマーケティングについて考える、実践型のイベント
参加者が松田医薬品の入浴剤のキャッチコピーを考え、フィードバックを通してマーケティングについて考える、実践型のイベント

イベントに登壇した茂野明彦さんと、富家翔平さん、そして参加者の数名の方に「身体があったまることとビジネスにはどのような関係があるのか?」 を聞いてみました。

湯どんぶり栄湯の浴場内で行われた本イベント。「心身があったまると、仕事にいい影響があると思うか?」という質問には、多くの方が挙手をして理由を教えてくれました
湯どんぶり栄湯の浴場内で行われた本イベント。「心身があったまると、仕事にいい影響があると思うか?」という質問には、多くの方が挙手をして理由を教えてくれました

茂野明彦さん(メディア「インサイドセールスプラス」運営)

僕は、ずっと仕事のことを考えてしまうんですね。放っておくと、一日に23時間59分くらい(笑)。おふろって、身体の温度も変わるし、すごくさっぱりするじゃないですか。 ON OFFのスイッチが一番わかりやすい形で切り替わるので、日々活用していますね。

富家翔平さん(株式会社EVeM代表/マーケティングディレクター)

僕も切り替えに使っていますね。おふろもサウナも「仕事のことは考えないモード」に入る儀式のような感覚です。最近、意識的にやっているのは、外気浴の時に思いっきり気の抜けた表情をすること。握りこぶしが入るくらい大きく口を開けて、ぼ〜って。そうすると本当に緊張が解けていきます。スマホが持ち込めないのもいいですね。 「今、自分は休んでいるんだ」と自覚するための大切な場所です。

参加者の方①

会社のメンバーで銭湯やサウナに行くと、普段では話せない話ができる気がします。 「実は先週はけっこう仕事を抱えていてやばかった」とか。職場とは違う空間でリラックスできているからこそ話せるのかなと思います。

参加者の方②

お酒の席は楽しくしようとしちゃうんですけど、銭湯やサウナはちょっと違う。職場とは違った真面目さで、落ち着いて親密なコミュニケーションがとれる感覚があります。

サウナや銭湯などをビジネスシーンに取り入れている方は、その効果を身を持って実感している様子でした。

身体をあっためることは、円滑なコミュニケーションを生み、健康にもいい効果をもたらします。 みなさんもサウナやおふろを通して、よりよい働き方を考えてみてはいかがでしょうか。

明日も健やかに、気持ちよく仕事をするために、サウナやおふろを上手に活用してみませんか? 自宅のおふろで身体をあっため、疲れを取るために、松田医薬品の「生薬唐」を使ってみるのはいかがでしょうか?

取材・執筆:中たんぺい
編集:荒田もも(Huuuu)、友光だんご(Huuuu)

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